Wantedlyが2017年9月14日にIPOしてから2ヶ月程度がたちました。
8月決算の会社ですので、上場してから最初の決算期となる2017年8月期の開示も終えました。
(正確には、上場が9月のため、上場時点で決算をまたいでいますが、上場してからはじめてのIRという意味です)
>>WantedlyのIR
今回は、IPOの初値が公募価格の約5倍となったWantedlyのその後の株価や、IPO前の業績・資本政策をチェックしていきます。
2017年8月期の決算短信では、収益の柱が企業ユーザからの「Wantedly Visit」への募集掲載料であると説明されています。
当社グループの営業収益は主に、企業ユーザが「Wantedly Visit」への募集掲載などを管理するSaaS型 ツール「Wantedly Admin」を利用するための基本プランやオプション機能など各種サービスの利用料、企業ユーザのニーズに応じて基本プランやオプション機能を組み合わせた個別提案を行っていく提案販売により構成されております。
「当社は、ビジネスSNS事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。」として、セグメント別・プロダクト別の業績開示はありません。
実質的なIPO申請期である17/8期は増収減益でした。これは、名刺管理アプリであるWantedly Peopleへの広告費が3.4億円ほど発生したことが大きかったようです
(出処:Iの部等からの推計、マーケットデータ)
*シリーズA、Bにつき株式種類の記載がありませんでしたが、わかりやすさのために上記の表現にしています。また、B-2についてはBと同じバリュエーションで行われているため、シリーズBのextendとして整理しています
さて、一部ニュースにもなったとおり、IPO公募価格でのバリュエーションは46億円程度で、日経新聞等が投資した直近ラウンドからは半分ちかくまで下がっているため、確かにここだけを見るとダウンラウンドIPOであったといえます。
一方、初値ベースでは229億円をつけており、その後10月末には300億円まで到達したところまで見ると、結果的にはシリーズBの投資家にもしっかりリターンが出る形となりました(もちろん公募・売出に当選した一般株主の方がリターンは大きいわけですが)。
Wantedlyの上場前後には初値が公募価格の倍以上になるケースもめずらしくなかったため、「ビジネスSNS」、「AI」、「ビッグデータ」などのキーワードが入った銘柄として、マネジメントは初値の上昇をある程度期待しており、株主もある程度は合意した上での公募価格設定だったものと推測します。結果的にWantedlyの未上場時の株主は誰も損しませんでした。
上場後の株価推移はこちらです。
*これから資金調達するスタートアップCEO・CFOの参考になることを目的に、推計値に基づいて記載
・シリーズAの資金調達がIPOの約4年前に2億円、ポストバリュエーション19億円程度で行われています。
・シリーズAが2013年7月に行われており、直近期である2013年8月期のPLは売上34百万円、当期利益は2百万円でした。いわゆるPER等では説明のつけにくい、スタートアップ特有のKPI・ビジネスモデル・創業者をベースにしたバリュエーションであったと思われます。
・シリーズBはAから2年後の2015年6月にポスト92億円程度で2.1億円調達しています。直近期である2015年8月期のPLは売上4.5億円、当期利益はマイナス3百万円のため、やはりPER等のマルチプルでは説明できないバリュエーションです。IPOのn-2期に入っており、売上のグロースが十分見てとれるタイミングでの増資だったため、シリーズBは性質的に、IPOを見越した資本業務提携であったと推測されます。
・IPOの公募バリュエーションは46億円、初値で229億円まで上がったため、未上場時の投資家は概ね2~10倍程度のリターンとなりました(その後はさらに株価上昇して10月末の時価は300億円程度)。なお、IPO時の売出にはサイバーエージェントのみが一部(80,000株分@1,000円)参加しています。
・上場後に確定した申請期(2017年8月期)の当期利益26百万円をベースにすると、IPO時のPERは公募株価で175.9倍、初値で881.1倍でした。見込PERは224倍程度(2017年10月末時点の時価300億円・2018年8月期の見込利益1.3億円から計算)ですので、一般に言われる「IPOの公募PERは20-40倍程度」という物差しは、Wantedlyのような華々しいドメインと成長戦略を誇るスタートアップIPOには適用されないことがわかります。
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